“専門家”として?

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就職して数年経って実習にも慣れてきた頃*1,「そろそろ講義をしてみようか」と研究室の教授に声を掛けられて,英語で書かれた一冊の本を手渡された.「おおよそ男性と女性で1回ずつかな」といわれて,他の教員が長く続けていた骨盤の構造の講義2回分を引き継いだ.

 その他の本もいろいろと読んで,学生の時の古い講義ノートを探し出して読んで,一ヶ月ほど準備して,臨んだことを思い出す.講義は良い出来ではなかったけど,その頃は学生と歳があまり離れていなかったので彼らの共感は大きかったし,間違ったときには気軽に突っ込みが入るし,私の方も自分の実力不足がよく分かっていたから垣根を作らずに対応できるので,一緒に講義しているような感じだった.けれども,そのレベルに留まるのは違うと思ったし,調べているうちにJournal Clubの練習のようで面白くなってきたり,ピースがはまって自分の理解が深まる過程や,それを講義で伝えることは楽しくなっていた.理解が進むと骨盤周りの剖出の手際も良くなって実習の作業もはかどるようになり,その経験を講義のなかで話すことが出来るようになった*2 *3

 講義を始めてから数年たった頃,実習の最中に一人の学生から,割とマジな感じで「骨盤の研究って,どんなことするんですか?それってどんな風に役立つんですか.」と尋ねられ,一瞬,何のことか分からず,ポカンとしたが,(骨盤の研究してねーよ)とむげに否定するのはプロの態度ではないと思ったので,「ま,まあな」と,その時は取り繕いごまかした.それからどこでどう伝わったのか「iさんは骨盤の専門家らしい」と広まったようで,困惑したが,否定するのは大人げない*4 *5 *6.その点はしたたかに,状況を逆手にとって,実習中の与太話に「これ↑」を話すという持ちネタにしていた.

 年月が過ぎ,教育をオーガナイズするようになってしばらく経つ.研究室の教員も経験を積んだので,Nさんに「そろそろ講義をしてみようか」と*7声を掛けて,骨盤の講義を任せた*8.いつか「骨盤の専門家」と学生に呼ばれて,彼が困惑する日が来ることを想像している*9

*1:前世紀末の頃です.

*2:

kapibarasenn10.hatenablog.com

*3:

kapibarasenn10.hatenablog.com

*4:医学科の学生さん達は講義の内容を研究していると思うようだ.

*5:実際はこんなことをしている↓

*6:

www.qlifepro.com

*7:満を持して!

*8:昨年から.

*9:少し楽しみ〜