2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

上腕骨と腕神経叢

上腕骨の骨折が疑われるとき,感覚と運動の麻痺の程度と局在を調べることが,骨折の場所と深刻さを類推する手がかりになるかもしれない.腕神経叢に由来する主要な神経のうち,腋窩神経と橈骨神経,尺骨神経は上腕骨のそばを走行するので,上腕骨が骨折した…

Virchowのリンパ節

頚部で鎖骨,胸鎖乳突筋,と僧帽筋に囲まれる陥凹している三角形の領域を,鎖骨上窩とよぶ.鎖骨上神経などの頸神経叢由来の皮神経が皮下を走行し,その奥には肩甲舌骨筋があり,肩甲上動脈などの枝を出す鎖骨下動脈があり,更に深部には腕神経叢が横たわる…

「カピバラ銭湯」における解剖学と神経科学

「カピバラ銭湯」の著者は解剖学の教育と神経科学の研究をしているが,解剖学の話題ばかりをエントリーすることに気づくだろう.二人のヘンリーの話でも述べたが,解剖学の興隆期は19世紀で,その後現在ではヒトの体の中を肉眼的に探索して,新しい構造が発…

表現型可塑性③

進化における現代の総合説では,環境によって引き起こされる表現型の変化はそれぞれの子孫の遺伝子に影響を与えることはない,と考えられてきた.多くの進化生物学者は表現型可塑性が進化に及ぼす影響はなく,むしろ自然選択の効果を弱めて進化の過程を妨げ…

「トイレを我慢すること」の解剖学的基盤

骨盤には二種類の神経叢がある.仙骨神経叢はL4からS3の脊髄神経前枝から構成される体性の神経叢で、骨盤底の肛門挙筋などを支配する.肛門挙筋は最も大きい骨盤底筋で、骨盤の内壁の内閉鎖筋の筋膜上の肛門挙筋腱弓などに起始し、直腸をループ状に取り巻き…