熱暴走,知恵熱と屋根裏のコーヒー部屋

f:id:kapibarasenn10:20201114154619j:plain

昼夜を問わず計算を続けていた三台のパソコンのうち,比較的に速い二台が所定のタスクを終えたので,久しぶりに電源を落として帰宅した*1.思えば夏からずっと計算三昧だが,9月にWIN4号がダウンしたことが一度あった.西日が入る部屋*2で週末中計算させていたから,温度が高くなりすぎて熱暴走したのだろう.居室のある建物は省エネ仕様になっているから,午前10時,午後2時,午後10時に強制的にエアコンの電源が切れるので,部屋を冷やしっぱなしにすることは出来ないのだ.「WIN4号は知恵熱か,,,」と独り言をいって,ポスドクの頃を思い出していた.
 ポスドク先は「実験するな」という研究室だった.そこで最初に言われたのは「始める前に考えよ」だった*3.結果を急がされることはなかった.もちろんそれは本人が引き受けることだから,結果を出さないことが許されている訳ではなく,結果が出なければ去れ,ということだ.生き残るために結果を求めるのは本末転倒だ,とHerr*4が思っていることを皆は知っていた*5.目先の結果を追いかけることは嫌われていた.その環境の中,自分が担当する最初のセミナーではこれから始める実験計画の厳密さを問われることが分かっていた.全ての時間を準備に割いて,言葉の問題も有ったから,一人になれる場所をさがして研究棟の屋根裏のコーヒー部屋で,ぶつぶつ言って練習していた.
 私が大学院生の頃のセミナーは全て日本語だった.ポスドクを終えて就職した頃の研究室セミナーも全て日本語だった.その後しばらくして,留学生が来る様になってから,英語で行う様になっていった.現在の私達の大学院の授業も英語で行っている*6.ある日の夕方,スクリプトを書いてパソコンに計算させているときに,隣の部屋から英語で話す声が聞こえてきた.翌日の発表のためにTさんが練習していたのだ.
 ポスドクになって初めてのセミナーの前日に40℃の熱が出た.これが知恵熱か,明日は大丈夫か,と一人で思っていた.倒れ込むように眠ると,翌朝には平熱に戻り,すっかり力が抜け,肝が据わっていた.

*1:マイペースのWIN3号は残業.

*2:ブラインドは閉めていたのだが,

*3:ただじっとして考えていた訳ではなく,研究所のあちこちに出向いて,尋ねたり,議論してもらったりして,三ヵ月程経った.

*4:研究室の教授のこと.そこではBossとは呼ばない.

*5:「自分のためにではなく,科学のために実験しているのだろう?もしも実験が上手くいかないのならば残念だが,力を尽くしたのなら悔いは無かろう.自分のために科学が変わる訳でもなし.」

*6:学生の出身地はベトナム,中国,エジプトそして日本なのだ.