紙を糊で壁に貼る ①;壁側腹膜と横筋筋膜・腹横筋

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Horizontal disposition of the peritoneum in the upper part of the abdomen. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gray1039.png Henry Vandyke Carter / Public domain

腹膜腔の壁は,内側から壁側腹膜・横筋筋膜をへて腹横筋になっている.「横筋筋膜と壁側腹膜は二枚のはっきりとした膜が見えると思っていた,けれども、実際には一枚しかないように見える。」とMさんが言っていた.同じように思っていたヒトが多いかもしれない.

 肉眼的に観察出来る二枚の膜があるわけではなく,一枚の膜の腹膜腔側を壁側腹膜,外側の筋鞘や腹横筋に付いているところを横筋筋膜という名で呼ぶ.けれども,組織像を観察すると,単層扁平上皮(中皮)の壁側腹膜と,疎性結合組織(線維芽細胞と膠原線維の薄い層)の横筋筋膜の2層が区別できる.

 例えると,一枚の紙に糊を塗って壁に貼り付けたとき,紙が腹膜で,糊が横筋筋膜で,壁が腹横筋に相当する*1*2

*1:体腔は胎生期初期には連続した空間(胚内体腔)で,その頃から漿膜とその裏側の結合組織はある.発生が進むにつれて,体腔は横隔膜などによって,心膜腔・胸膜腔と腹膜腔の三つに区切られる.壁側腹膜と横筋筋膜,壁側胸膜と胸内筋膜,漿膜性心膜の壁側版と線維性心膜,は全て同様に“紙と糊”の関係にある

*2:スクリプト人間的には「紙と糊と壁」三部作が書けそうwww.