脳神経の根を見ていたTさんが,「脊髄神経*1に比べて,脳神経*2が柔らかいのはどうしてだろう」と尋ねたので,その答えのヒントはもう観察済みだから考えてごらん,と言ったら,ちょっとふくれて笑った*3.すぐに答えを教えてくれると思っていたらしい.彼女は「髄鞘を構成する細胞が違うためかなぁ,,」とつぶやいたので,他の要素の寄与の方が大きいとおもうよ,と付け加えた.
椎骨の椎弓を切り,硬膜を縦に切開すると,直下には半透明で柔らかいクモ膜にふれることができ,それを開くと軟膜が密着した脊髄と脊髄神経の根を観察することができる.外側の骨をさらに取り除き,椎間孔を背側に開放すると,脊髄神経がクモ膜と硬膜をまといながら脊柱管から外へ出る様子を観察することができる.末梢神経の表面はクモ膜・硬膜と連続しており,その構成(線維芽細胞と細胞外基質)が同様であることが理解できる*4
末梢において,一本の軸索を覆う細胞外基質を神経内膜(endoneurium)と呼ぶ.複数の軸索の束をまとめて包む膜を神経周膜(perineurium)と呼ぶ.軸索の束をさらにまとめて末梢神経全体を包む結合組織性の膜を神経上膜(epineurium)とよぶ.神経上膜は,クモ膜と硬膜と連続している*5.
Tさんは答えにたどり着いたかなぁ*6.