肝三角間膜

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The superior surface of the liver.

Henry Vandyke Carter (1831–1897) in Henry Gray "Anatomy of the Human Body" 1918. FIG. 1085


春解剖にきているH君に,「三角間膜がよくわかりません」と質問されたので,
「横隔膜の壁側腹膜は折れかえって肝臓の前面の臓側腹膜に移行する.このとき肝の冠状面を左右方向に走行するので,これを肝冠状間膜という.肝の上面は腹膜に被われず,横隔膜に直接接触しており,この部分を無漿膜野と呼ぶ.肝冠状間膜の左右の外側端では,奨膜が三角形をなして横隔膜に付着する.これを左右の肝三角間膜とよぶ.」
と説明し,取り出した肝臓の上面に臓側腹膜で覆われていない無漿膜野を触って,その左右になぞっていくと,臓側腹膜の断端が三角形になっている様子を見せた.

見えるもの全てを分類して,名前を付けるのが解剖学者なのだが,いまではすっかり「何の役に立つのですか?」という質問に慣れきってしまっている私は,先回りして,「これが何かの機能や,有用性に関わるかは,ちょっと私には分からないねぇ〜」と予防線を張って,逃げ切りを図ろうとしたところ,隣できいていたS君が,
「冠状動脈バイパスで,胃大網動脈を利用する方法では,左三角間膜から横隔膜の下面に行き,心膜腔への通路を作って,冠状動脈にバイパスをつくるって,読んだ本に書いてありました」と教えてくれた.S君凄〜い*1

*1:2年生だよ.