大学の道具的価値

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大学の道具的価値について尋ねた人がいた*1.資格の取得を行う学部*2では就職に有利とか,学んだ知識やスキルが社会で役に立つからとかの道具的な価値を,とやかく悩むことはほとんどないので,道具的価値がどこに起因するかを考えるヒトは少ない.

 大学では,これまでに培われてきた学問(サイエンス)の内容を伝えて,次の世代に引き継ぐことが行われていて,学生は手渡されたことをさらに次の世代に伝えることが期待されている.だから,内容が上手く伝わらなかったり,誤って伝わった場合には,放置せずにフィードバックする必要がある.それは,これまでに学問を培った世代に対する教員の責任だし,次に続く世代への義務だ.

 だから,それぞれの教員が教育の成果*3を決めているのではない.教員はこれまでの学問を培った人々に,心の中でこれで良いかと伺いを立て,そしてこれから学問を引き継ぐだろうヒトを思い浮かべて,前に進めるための機能を想像する.そして評価は二つの間で学問によって自ずと定まる*4.「単位をあげる」と言うのは教員の思い上がりで,学問をスポイルして,質を下げる.「単位をください」とか言うことも同様に学問をスポイルし,質を下げる.報酬のように「あげる」とか「貰う」と言ったり,負の報酬のように「あげない」とか「貰えない」とか言うのは誤っている*5 *6

 誤りの原因は,学問を道具的な価値の水準で表層的に取り扱っており,本来の価値*7 *8を想いもしていないからだ*9.学問と大学の道具的な価値の背後には本来の価値が存在している.それはとても大きいので,道具的価値をめぐってさまざまなやりとりが成されるのだろう*10 *11

*1:

https://twitter.com/kskgroup2017/status/1210018344025255937

 

*2:私が教員として仕事をしている学部もその様なところです.

*3:成績

*4:その内容と基準はシラバスに記されている.

*5:成績は報酬ではなく,評価である.

*6:

https://www.chunichi.co.jp/s/article/2020011101001001.html

*7:内在的価値

*8:

http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/ethics/wordbook/intrinsic.html

*9:それでは,どうして私達は表層的な価値のやりとりに水準を落とすのか?どうして本来の価値の水準に向き合わないのか?そんな例は枚挙にいとまがない.それが問題.

*10:大学は学問をするところ.

*11:

https://getnews.jp/archives/2354785/gate