役に立つ・過去とミライ・自由にする

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職業教育ではない科目を長く教えていた教員が,退職した後も非常勤講師として勤務していたが,それも退くと聞いた.後を引き継ぐ科目を検討している時に,「役に立つ論議」が始まったのであった.役に立つ事に関してはどちらの方角から見ても最強をほしいままにする方々は,枕詞に「微分積分など使うこともないし,役に立たない」と声高に言い,「データサイエンスの科目を行うべきだ」という今日的に求められているアイデアを話す.

 役に立つ系のヒト達はイマを生きている.イマ求められている事柄に対応して(イマ,入力を受けて),イマそこにある課題を解決する(イマ,出力をだす)*1.他方で,役に立つ系の背後にいるヒト達は,イマだけを生きているのではない.知識の体系と未解決問題を過去から受け取り,解決を図りミライに受け渡す(成果をミライに贈り,未解決をミライに委ねる).ミライのために種を蒔いて収穫するサイクルから離れると,イマ役に立つことは枯渇して,やがて直ぐに役に立たなくなる.

 役に立たない系の研究しているヒトが,その研究が有用でどんな利益を生むかを説明しようとしても的を外しがちである.役に立つ系のヒトビトが頼る数多ある機械たち*2は,現実の中では隠されて見ることや感じることのできない情報を知ることを可能にするものだ.役に立たない系のヒト達が積み重ねた成果が,現実の制約を解き,役に立つ系のヒト達を自由にしているのに.

「思い込みを捨てて,分からないに耐えて,あなたを自由にするために,私は研究する.(エメット・ブラウン)」*3

 これからは「それが役に立つのかどうかではなく,聞いているあなた方を含む私達はそれに支配されていて,逃れることができないのだ.私達の行っている研究はあなたを自由にする為なのだ」と言うことにしよう.

*1:けれども,イマ役に立つ事を行っているヒトは,それが分からなかった頃に取り組みはじめたヒト達だ.

*2:CTとか,MRIとか.

*3:

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