頸動脈サイフォン

By Henry Vandyke Carter - Henry Gray (1918) Anatomy of the Human Body (See "Book" section below)Bartleby.com: Gray's Anatomy, Plate 513, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=559527


4年生の臨床実習が始まったのだそうだ。最初に耳鼻咽喉科頭頸部外科に行っているI君が夕方遅くにやってきた。その日の手術でモニター越しに見た側頭骨*1のなかを走行する顔面神経*2*3や、鼓室*4の上壁の粘膜の滑らかさを話してくれたが、視野奥の骨の向こう側に内頚動脈*5があることを忘れないようにと、指導医が話していたことがイメージできなかったと言っていた。

内頚動脈は鼓室の前内側で側頭骨錐体部を走行し、海綿静脈洞部を経て、大脳部に至るが、頭蓋底を通過するあたりで強く屈曲する。それを頚動脈サイフォン*6と呼ぶ。

「それが、鼓室のそばにあることを注意したんですね」

「あんなに解剖したのに、わからないことばかりだ」とも言っていたけれど、そんなものだろう。京都へ旅行に一度行ったからといって、豊国神社*7や耳塚*8国立博物館*9の裏手にあることとに気づくわけでもないだろう。

一生勉強だよ、と話をしたら、彼はアトラスやら辞典をめくり、該当ページをコピーして帰っていった。