4年生の臨床実習が始まったのだそうだ。最初に耳鼻咽喉科頭頸部外科に行っているI君が夕方遅くにやってきた。その日の手術でモニター越しに見た側頭骨*1のなかを走行する顔面神経*2*3や、鼓室*4の上壁の粘膜の滑らかさを話してくれたが、視野奥の骨の向こう側に内頚動脈*5があることを忘れないようにと、指導医が話していたことがイメージできなかったと言っていた。
内頚動脈は鼓室の前内側で側頭骨錐体部を走行し、海綿静脈洞部を経て、大脳部に至るが、頭蓋底を通過するあたりで強く屈曲する。それを頚動脈サイフォン*6と呼ぶ。
「それが、鼓室のそばにあることを注意したんですね」
「あんなに解剖したのに、わからないことばかりだ」とも言っていたけれど、そんなものだろう。京都へ旅行に一度行ったからといって、豊国神社*7や耳塚*8が国立博物館*9の裏手にあることとに気づくわけでもないだろう。
一生勉強だよ、と話をしたら、彼はアトラスやら辞典をめくり、該当ページをコピーして帰っていった。
*1:https://en.wikipedia.org/wiki/Temporal_bone
*2:https://en.wikipedia.org/wiki/Facial_nerve
*3:日本語: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A1%94%E9%9D%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C
*4:https://en.wikipedia.org/wiki/Tympanic_cavity
*5:https://en.wikipedia.org/wiki/Internal_carotid_artery
*6:https://www.imaios.com/en/e-anatomy/anatomical-structure/carotid-siphon-1553667612
*7:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE_(%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%B8%82)