解剖学実習のさなかに,大腿後面を観察して,半腱様筋*1・半膜様筋*2と大腿二頭筋*3の筋腹の間を近位から遠位に走行する直径1.5 cm ほどの構造に,悩んでいたA君が
「これは一体,何という筋肉なのでしょうか?」
と質問したので,私は
「もし,それが筋肉(骨格筋)だったら,起始と停止を探して確認すれば,その筋がどの様な運動に関わるか分かるし,支配神経を見つけてそれが何かを確認すれば,どの様なユニットに属するかを理解できるよ.」
と返事した*4.彼はうなずいて,剖出と観察にもどったので,私はそっとその場を後にした.
その他のグループの間をうろうろとして,いろいろな質問に答えて,雑談をするうちに,すっかり忘れていたのだが,随分と時間が経った後に,一周して戻ってきたら,彼はフクレて,
「だましましたね!」
と私に言った.にやけた私は,
「いやいや,君が “何という筋肉?”というから,骨格筋基本三点セットの説明をしたのだけれども,,,?」
と,とぼけた.
さて,A君が知りたかったのは何でしょうか?