最長筋と棘筋;「筋腹の共有」って何?

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Longissimus muscle, Gray Image:Gray389.png, modified by Uwe Gille

骨格筋を理解するときに,起始・停止・支配神経が参考になる.起始と停止が分かれば,関わる運動を知る事ができる.四肢の筋はこれでほぼ良い.けれども,少し戸惑う筋もある.

たとえば,最長筋*1のおもな起始は腸骨稜だが,腰椎の棘突起から始まる内側からの腱もある.より分けて深く入ると下位肋骨から始まり,上方に走る筋線維もある.このことは最長筋が起始を多く持つ「多頭筋」である事を示す.上方ではそれぞれの肋骨角・横突起に付着して停止し,頸椎から側頭骨乳様突起まで続く.最長筋は多くの停止を持つ「多停止筋」でもある.

棘突起から最長筋に参加する腱を追いかけると,主となる太い筋腹に入るばかりでなく,そこから離れて,内側上方に戻る筋線維を見る.これは最長筋ではなく,棘筋だ*2.最長筋と棘筋は筋腹の一部を共有している.

筋腹の共有とは何だろう*3

筋に名前が与えられる以前から,私達の背部には,「その筋」があった.その筋はあちこちの骨(腸骨稜・棘突起・下位肋骨)に付着して,運動の支点になっていた*4.あちこちに付着して(肋骨角,横突起,乳様突起,棘突起),骨を引っ張って動かしていた*5

解剖学者達は,運動様式を反映するから有用だと考えて,骨への付着部位で筋を分類する事を思いつき,筋を分類して命名したのだろう.その時に「その筋」のメインの部分は横突起間筋群のカテゴリーに入れられて,最長筋と呼ばれるようになり,一部は棘突起間筋群に入れて,棘筋と呼ばれるようになったのだろう*6

*1:https://en.wikipedia.org/wiki/Longissimus

*2:https://en.wikipedia.org/wiki/Spinalis

*3:その部分は最長筋なのか,それとも棘筋なのか?

*4:起始

*5:停止

*6:解剖学は身体の設計図ではない.それは現象の記載と分類.