もっと広く伝える構造:副腎髄質と内分泌器官

自律神経系の遠心性末梢神経は,その経過に自律神経性神経節を有し,節前線維が多数の節後神経細胞シナプスをつくる上に,無髄の節後神経線維が標的器官の中で広く伝達物質を放出し,広い範囲に影響を及ぼす.この様な自律神経系の構造は身体の中の状況を比較的に広く変更することを可能にする*1

f:id:kapibarasenn10:20180812171553j:plain

自律神経系の節前神経細胞と節後神経細胞

 

 副腎髄質 adrenal medullaには,腹部の交感神経幹を離れた大小内臓神経の一部(交感神経節前繊維)が侵入して支配している.副腎髄質細胞は軸索をもたない内分泌細胞で、血中にadrenalin, noradrenalinを分泌し,全身に交感神経同様の作用(逃走か闘争)を及ぼす.

f:id:kapibarasenn10:20180824165316j:plain

副腎髄質

 

 神経系と内分泌系には機能的な共通点がある.これら器官系*2は,例えば「消化系の同化」「呼吸系の交換」「腎泌尿器系の排泄」「循環系のロジスティクス」などの特有の機能をを持たず,他の器官系を調節することに特化した器官系である.神経系(その中の体性神経系と自律神経系)と内分泌系の違いは,その作動モードにある.

 体性神経系はとても速く起動し,短期に小さな部分を制御する.自律神経系はやや速く起動し,ある程度持続的にそこそこ広い部分を制御する.内分泌系は緩徐に起動し,神経系よりは長く持続的に個体全体を遠隔で制御する*3.これらの系は協調して適応度(生存と生殖の確率)を高める.

*1:広く伝える構造:自律神経性節前線維と節後線維 - カピバラ銭湯

*2:身体には11の器官系がある.皮膚外皮系,骨格系,筋系,循環系,神経系,内分泌系,消化系,呼吸系,生殖系,泌尿器系,血液系,である.

*3:内分泌系はホルモンを分泌することで標的器官を制御するが,ホルモン hormone という用語をはじめて用いて内分泌研究の先駆けになったのは,Brown-Séquard (1817-1894) である.Brown-Séquard症候群についてはまたいずれ.

https://en.wikipedia.org/wiki/Charles-Édouard_Brown-Séquard