鉄筋コンクリートは骨の夢を見るか

骨は多くの場合,軟骨内骨化(endochondral ossification)を経て形成される.そこでは,軟骨細胞がコラーゲンを分泌して膠原線維(コラーゲン線維)からなる軟骨基質を作り,骨をもとになる型を準備し,その後に型の中に骨芽細胞が侵入して,骨細胞に分化して[Ca3(PO4)2] と[Ca(OH)2] を結合させて,ハイドロオキシアパタイト[Ca10(PO4)6(OH)2] を沈着させる.

 骨の機械的な性質(骨強度 )はしなやかさ(flexibility)と硬さ(hardness)から成り、「しなやかさ」は膠原線維の量に依存し,「硬さ」はハイドロオキシアパタイトの結晶化の程度と量に依存する.膠原線維とハイドロオキシアパタイトという細胞外成分の組み合わせを持つことで,しなやかさと硬さを両立する骨は強い.

 骨によく似た構造物がある.鉄筋コンクリートである.鉄筋コンクリートの強さも「しなやかさ」と「硬さ」から成る.しなやかさは鉄筋に依存し,硬さはコンクリートに依存する.その作り方もよく似ている.鉄筋を組んで,その周りを覆った型を作り,その中にコンクリートを流し込んで固める*1

 しなやかさと硬さという相反する性質を両立する強い構造を作るために,鉄筋コンクリートは骨と同じような構造にたどり着いたと考えられる.その意味で言えば,骨と鉄筋コンクリートは異なった祖先を有する類似した構造で,相似である*2

*1:鉄筋コンクリートの思い出はまたいずれ.

*2:とはいえ鉄筋コンクリートは自然選択されているわけではないので収斂進化ではない.