Virchowのリンパ節

頚部で鎖骨,胸鎖乳突筋,と僧帽筋に囲まれる陥凹している三角形の領域を,鎖骨上窩とよぶ.鎖骨上神経などの頸神経叢由来の皮神経が皮下を走行し,その奥には肩甲舌骨筋があり,肩甲上動脈などの枝を出す鎖骨下動脈があり,更に深部には腕神経叢が横たわる.これらの間隙を柔らかい結合組織とリンパ節が埋めている.

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 鎖骨上窩の下内側の角で,鎖骨下静脈と内頸静脈が合流して腕頭静脈を作っている.この部分を静脈角というが,右と左では違いがある.右静脈角には上方からのリンパ流が注ぐ右リンパ本幹が合流するので,右鎖骨上窩を埋めるリンパ節は主に上方の頚部と頭部からのリンパ流を受け取るのに対して,左静脈角には胸腔と腹腔からのリンパ流を集め,静脈血に注ぐ胸管が合流している.左鎖骨上窩のリンパ節は下肢,骨盤,腹腔臓器,胸腔臓器からのリンパ流の影響を受ける.

 胸部,腹部から骨盤にかけての臓器に原発がある悪性腫瘍は,遙か離れた左鎖骨上窩リンパ節に転移することがある.これはリンパ行性転移が,胸管を経由して,静脈血に注ぐ手前まで辿り着き,鎖骨上窩リンパ節に及んだことを表している.

 悪性腫瘍との関係を指摘したドイツの病理学者 Virchow の名をとって左鎖骨上窩のリンパ節転移を「Virchow(ウィルヒョウ)のリンパ節」とよぶ.

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*1:Henry Vandyke Carter, Plate 1194 in Henry Gray (1918) Anatomy of the Human Body (See "Book" section below) Bartleby.com: Gray's Anatomy, 

*2:Rudolf Virchow Source Original by http://www.dhm.de/lemo/objekte/pict/virchbio/index.html Author C. Pietzer