F君

私達の大学では5月に医療系学部の新一年生が連れだって,地元の景勝地立山室堂で野外研修を行い,親睦と多職種連携教育と大学生活のオリエンテーションとしているが,その新入生合宿研修の時に初めて会ったのがF君である.野外研修に入る前にアイスブレイクと称して,新入生と教職員で一体感を高める活動*1を行うのだが,シャイなF君は,大学生になってなんでこんな事をしなければならないのだい?というちょっと不貞腐れたオーラをまとって,嫌々行っているのが手に取るようにわかる学生だった.
かく言う私は社会的動物*2として適度に楽しい雰囲気を醸し出すことを心がけていた正しい中高年ではあったが,18才的感性がF君的な気分を強いる事を,実感を持って理解していたのである.
それからしばらくして,F君は私達の研究室を時々訪れてはいろいろな話を聞かせてくれる様になった.先日も臨床実習で附属病院の診療科を回っている間,空き時間ができたと言って,白衣を身にまとったF君が現れて,「勉強をサボって知識がないことがいけないのは,僕たちが困るからなのではなくて,患者さんたちに害を与えてしまうんからなんですね」と話した.
そこには医師の職業倫理と患者の権利を暗記して入試の面接に臨む,かつての頭でっかちな受験生は何処にも居らず,自らの目で見て経験したことに基づいて考えるF君がいた.F君,成長したなあ〜,と言う言葉の後に,〜昔はあんなに不貞腐れていたのに,,,と付け加えたら,「あの時のことはもう忘れてください!!」と言い返された*3

*1:ひらたく言うと集団でゲームをして遊ぶ,ということである.

*2:社会人とも言う

*3:これはF君を讃えるエントリーです.くれぐれも誤解の無いように.F君ありがとう.