静脈系の発生過程で,頭部と上肢の静脈が合流して,右と左の前主静脈*1がつくられる.前主静脈は,総主静脈*2に上方から注ぐ.一対の総主静脈は下方からの体壁の静脈血も集め,静脈洞*3の左右に接続する.この段階までは左右対称な静脈系が作られる.
その次の段階で,左の前主静脈は進路を変えて吻合して,左腕頭静脈をつくり,右前主静脈に由来する右腕頭静脈に注ぎ,1つの上大静脈を経て,右心房に注ぐ*4.その結果,上大静脈が右側から右心房に注ぐ,非対称な静脈系が完成する.
左腕頭静脈が作られずに左前主静脈が遺残して,左総主静脈*5を経由して,左頭部と左上肢の静脈血が右心房に注ぐことが,およそ0.3%の例であると言われている.左上大静脈遺残(PLSVC, persistent left superior vena cava)である.
右側にも上大静脈があり,左右がそれぞれ独立して右心房に注ぐ場合を重複上大静脈という.