メイナード・スミスの「生物学のすすめ」

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メイナード・スミス(J. Maynard Smith)*1が1986年に書いたものの訳本を読んだ*2.彼はゲーム理論と進化的に安定な戦略(evolutionary stable strategy, ESS)の確立で知られる*3

この本の出版後に「行動」「脳と知覚」「発生」の章に書かれていた課題はつぎつぎと明らかにされた.「発生」の章は発生生物学の黎明期のさなかに書かれたものだ.おなじころホメオボックス遺伝子が発見されたことを思うと,そのころ形態形成という言葉に自分たちが惹かれていたことを思い出す.程なくして形態形成をめぐる発生生物学の成果は1995年には ノーベル生理学・医学賞(Edward B. Lewis, Christiane Nüsslein-Volhard, Eric F. Wieschaus)*4が与えられる.「行動」の章では認知地図についてのアイデアに多くが割かれている.海馬の空間認知地図の論文がポスドクでいたラボのjournal clubで取り上げられたことも思い出た.場所細胞とグリッド細胞*5の仕事には2014年にノーベル生理学・医学賞(John O'Keefe,  May-Britt Moser and Edvard Moser)*6が与えられる.いづれも自分が院生とポスドクだった頃のことで,そのころの息づかいのようなものを感じていた.
 同じ事を考え続けて,辿り着いた先で読んだ本には,これまでに考えた道筋が記してあった.

*1:

en.wikipedia.org

*2:生物学のすすめ (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2016/2/9 ISBN-10 ‏ : 4480097171

*3:

www.nature.com

*4:

en.wikipedia.org

*5:

bsd.neuroinf.jp

*6:

en.wikipedia.org