Scienceのスタイル

Scienceを進歩させるために仕事をすることはとても魅力的だ*1.その主役はScienceで,私達はその従業員として働く.普遍的な知識を発掘して体系づける”研究”と,その体系を未来に伝える”教育”がScienceというコインの両面にある.

 最小限のスタイルを持ち,対象を自分で見定めて,自分のスタイルを適用して,事実をつまびらかにする.そこには際限のない自由があって,成果は保証されない.他の誰もがやっていないことしかなく,どんな些細なことでも全てが新しく,誰もが身を置いたことのないところに立って,周りを見回すことができる*2
 Scienceのスタイルには,“スタイルを持たない”という逆説的なスタイル(counter-style)もある.見定める対象はその時代に多数が認めるものを選び,その時点で確立されている多数が価値を認める方法や考え方を適用して,問題の解決を図る.そこには際限のない自由はないが,状況にあわせた最適化と,“成果が保証されない”というリスクの最小化があり,適応度の増大が目論まれる.しかしながら,他も同様のスタイルを用いる確率は大きく,競争のコストが大きい.counter-style が成立する背景には,Scienceが行われる時点と評価・報酬が与えられる時点のずれが影響しているかもしれない.counter-styleは時間的なずれを小さく保ち,報酬が得られるまでの時間を小さくする効果がある.この様なconter-styleが選択される背景には,報酬の度合いは報酬が与えられるまでの時間に依存して,長くなると減少するという“時間割引”が影響していると考えられる*3 *4

 現実的には私達は,両極のスタイルのbenefitとcostを見積もって,それぞれの特性にフィットした,特定の割合でブレンドされた混合戦略を自らのスタイルにしている*5 *6 *7

*1:例えそれがほんのわずかなgainであったとしても.

*2:次のサイトで示されている一連の図は研究という活動を知る上で,とても参考になる,

matt.might.net

*3:神経経済学で言うtime discounting or time preferance 

en.wikipedia.org

*4:時間割引問題の解説が次のURLにある.https://bsd.neuroinf.jp/wiki/セルフコントロール

*5:混合戦略の解説が次のURLにある.https://ja.wikipedia.org/wiki/ナッシュ均衡

*6:「診断基準と診療ガイドラインに萌えない医学生がScience に取り組むの為の傾向と対策」 一條裕之 医学生のための研究キャリアアップセミナー 2019/3/7

*7:Scienceの実践はゲーム理論で定式化できるかもしれない.