くも膜下腔を満たす脳脊髄液は側脳室の脈絡叢で産生され,第三脳室,中脳水道,第四脳室と移動し,第四脳室正中孔(マジャンディー孔)と外側孔(ルシュカ孔)からくも膜下腔に流れこむ.総量100ml程度の脳脊髄液は脳の外側と内側の空間を満たす.脳室の空間の形を明らかにしたのはレオナルド・ダ・ビンチ*1である.
彼は人体を正しく表現するために解剖を始め,その後に解剖学そのものに興味を持った.彼の中では芸術的解剖学とアカデミックな解剖学が結合していた.その写実的な観察,断面図の採用,三次元的な図解にもとづく解剖学は実証的な解剖学の始まりと考えられている.
彼の解剖学キャリアの中期(1500〜1508)をフィレンツェで過ごした*2.この時期に彼が残したスケッチの中には,溶かした蝋を脳室に注入した後に,脳を切り開き,脳室の形を正確に記載したスケッチがある.そこには側脳室・第三脳室・第四脳室の形とその連続性が示されており,シルビウス*3が発表する100年以上前に,彼は脳室の構造を理解していた.
彼は数十年にわたって解剖学の研究を行い,おびただしい数のスケッチとノートを残した.それは生前に出版されることはなく,死後200年経って発見された*4.*5