(つづき)そうすると次に2つの疑問がうまれる.どのようにして門脈は2つの毛細血管床の間にはさまれるようになり,また,どのようにして輸出細動脈は2つの毛細血管床の間にある様になったのか,である.
門脈は全ての脊椎動物に共通に認められ,脊索動物のナメクジウオにもある.鳥類などのように胚の時期に卵黄を多く持つ動物では卵黄表面に広がった血管が卵黄静脈として血液を心へ運ぶ.ホ乳類においては卵黄は無いが,同じような静脈が腸管から心臓へ血液を運ぶ.発生が進んで,消化管からの出芽(budding)によって肝臓がその領域(横中隔)に中に発生してくると,肝と静脈が入り交じって,静脈は毛細血管に形を変え,肝類洞となる.肝の挿入にともなって,元来は一本の静脈の中ほどに毛細血管が作られ,結果的に2つの静脈,門脈と肝静脈に分けられるのである.
腎臓はネフロン(腎単位)から構成される.ネフロンは多段階を経由して進化したと考えられる.体腔にたまる老廃物と過剰の液体を体外へ排泄する腎管(尿細管)が最初に現れ,二段階目に血管が糸球体をつくり大量の液体を体腔に送り出す様になり,第三段階で糸球体と尿細管が構造的に結びつきネフロンが作られると共に体腔との連絡を失って,糸球体から尿細管へ濾過物が送られる様になったと考えられる.そのため,別の由来をもっている糸球体の血管と尿細管の血管が第三段階でリンクした結果,毛細血管床に挟まれた動脈が進化したと考えられる.
2つの毛細血管床にはさまれている肝門脈と腎輸出細動脈は,幾何学的には類似しているけれど,その成り立ちはずいぶんと異なっているようである*3