門脈・輸出細動脈と腎糸球体濾過(その①)

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2つの毛細血管床にはさまれた静脈を門脈といい,ヒトの体の中には二カ所有る.消化管毛細血管床の血液を肝に運ぶ肝門脈(*1)と,視床下部毛細血管床の血液を下垂体に運ぶ下垂体門脈ーーーと説明したら,「毛細血管床にはさまれる動脈はないんですか」と質問されたことがある.そんなこと考えたことがなかったなあ,と思った.質問した学生の顔やたたずまい,周りの様子まで思い出す.

 

有る.その場所は腎臓.

 

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腎に注ぐ腎動脈は髄質を進む葉間動脈①となって皮質へ向かい,弓状動脈②になり,髄質と皮質の境界を表面に平行に走行するが,90度曲がって,表面に向かって走行する小葉間動脈③となる.小葉間動脈から輸入細動脈④となって,糸球体⑤に注ぐ.糸球体は毛糸玉のように絡まった平滑筋を持たない毛細血管.

糸球体からでる血管は輸出細動脈⑥である.厚い平滑筋からなる中膜を有している.輸出細動脈は髄質に向かって下行する直細動脈⑦となり,髄質の尿細管周りの毛細血管⑧となる.毛細血管は直細静脈⑨として髄質を上行して,皮質と髄質の境界部を走行する弓状静脈⑩へ注ぐ.弓状静脈は小葉間静脈⑪を集め,葉間静脈⑫へ注ぐ.葉間静脈は集まって,腎静脈となり,腎を離れる(*2).

輸出細動脈と直細動脈は,糸球体の毛細血管と髄質の毛細血管の間で,2つの毛細血管床にはさまれる動脈である.

 

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腎の血管での圧の分布を考えてみる(*3).動脈にはさまれているので,糸球体の受ける圧は動脈圧相当.濾過されて生じる原尿は一日当たりおよそ150〜200ℓ.このような大量の糸球体濾過は高い圧のもとで行われることが理解できる.(つづく)

*1:Henry Vandyke Carter - Henry Gray (1918年) Anatomy of the Human Body (See "ブック" section below) Bartleby.com: Gray's Anatomy, Plate 591

*2:研究室ホワイトボードの落書き

*3:糸球体内圧はおよそ50 mmHg,門脈圧はおよそ10mmHg (100〜150mmH2O) と言われている(標準生理学 7版, 医学書院 2010).図はおおよそのイメージで,正確ではない.