機能的に両立しない問題の解決

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SherryとSchacterは,進化の過程で機能的に両立しない(functionally incompatible)問題が解決される際には,独立した別個の策が選択されることを理論的に示し,情報の差異(variance)をコードする陳述記憶を担う神経機構と,情報の普遍性(invariance)をコードする非陳述記憶を担う神経機構が別であることを見抜いていた*1

 理想を共有することはできるのだが,理想にたどりつく道筋の細かな点が共有できないことがたびたびある.その時に,尖った部分をぶつけて,なんとも収まりの悪い話をした結果,①利害の多寡を見つめて,止めときましょうとなるか,それとも,②部分に分けて,それぞれに修繕パッチを当てるように局所的な解決方法を充てて,おおよそそちらの方向に進むということで合意するかは,大きな分かれ目だ.

 対応法①のコストはゼロで利得もゼロだ.共有された理想の総量が損なわれ,減少するおそれもある.対応法②では,局所的解決方法の適用によって費やされるコストと近似的に解決されることによる利得の比較が結果に影響を及ぼす.もしも,自然選択が機能的に両立しない利害の対立を解決するならば,それぞれに対してコストと利得の間で実現可能な解決策をあてがうに違いない.

 互いプレイヤーの相互作用が結果に及ぼす部分は多いが,そもそも既に尖った部分を見せ合っているのだから,信頼関係が前提にあることを疑うべきではない.だから,少し進んだ理解を手にすることができるに違いない.

 

*1:Sherry, D. F., & Schacter, D. L. (1987). The evolution of multiple memory systems. Psychological Review, 94(4), 439-454. http://dx.doi.org/10.1037/0033-295X.94.4.439