(「機能的終動脈」からつづく)
身体の中には動脈の吻合が多く見られる場所もある.肩関節周りでは肩甲上動脈と肩甲下動脈が肩甲骨の背側で吻合している様子を肉眼で観察することができる.
膝関節の周りには膝窩動脈の枝が膝関節動脈網を作っている.
この様な吻合は「よく動く場所」に見られ,そこでは張力が加わる場所が機能的に変わる.例えば肩関節や膝関節ではポジションに依存して近隣の細かい動脈が圧迫されるが,関節周囲動脈網によって側副路経由の血流が確保される.(もしもという言葉は進化の歴史の中では自覚的に注意して用いるべきだが,,,) 側副路が無い場合,関節のポジションに依存して運動機能が妨げられる恐れがある.捕食者から逃げる最初の一歩が短くて命を落とす可能性や,餌食に襲いかかる一瞬の遅れによって取り逃がす可能性が個体の適応度を下げただろうことは想像に難く無い.そこには側副路を有するコストを補って余りあるbenefitが有ったと考えられる.
消化管を栄養する動脈は吻合が著しい.蠕動運動に伴って局所の脈管が絞扼されて,血流が妨げられた時に側副路が補償すると考えられる.*3
*1:肩関節周囲の動脈 Henry Vandyke Carter (1831–1897) in Henry Grawy (1918) Anatomy of the Human Body (See "Book" section below) Bartleby.com: Gray's Anatomy, Plate 521
*2: 膝関節周囲の動脈 Henry Vandyke Carter (1831–1897) in Henry Gray (1918) Anatomy of the Human Body (See "Book" section below) Bartleby.com: Gray's Anatomy, Plate 552
*3:対照的に心室は心拍によって全体の圧が変動するので,冠状循環においては側副路のbenefitは少ない.
*4:上腸間膜動脈 Henry Vandyke Carter (1831–1897) in Henry Gray (1918) Anatomy of the Human Body (See "Book" section below) Bartleby.com: Gray's Anatomy