CajalとDeepL

 

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Santiago Ramón y Cajal. Spanish Nobel laureate in medicine. Original photo is anonymous although published by Clark University in 1899. Restoration by Garrondo

医学科2年の水平・垂直統合型のActive Learning (AL) 科目*1のレポートについて,「現在レポートを書いています。調べていくうちに1つの仮説を書いた論文を見つけたのですが、スペイン語で書かれていて読むことができません。さらに調べたところその論文の内容をまとめたサイトがありました。レポートで引用する際にそのサイトの内容を参考にするのは大丈夫なのでしょうか?」

とKさんが質問したので,

「二次情報の引用はよろしくないです.一次情報を引用するべきです.
関連しますが,本質的で深い問題が未解決なとき,よくおきる低質で残念なことは,勉強不足なヒトの思いつきの雑で適当な言説が流通し,誤った理解をもつヒトが現れることです.皆さんは専門家になることを選んだのですから,気をつけるべきです.
証拠がない時にとる正しい態度は分からないことを明確にすることです.どの様にわからないことがあるか,というレポートには価値があります.」

と返事をした.どんな論文かをあまり想像せずに

「DeepLに頼むとおおよそ意味がわかりますよ.」*2 

と付け加えたら,

「他の翻訳では意味の通らない日本語になってしまったのですが、DeepLを使用したところ、少しだけ意味の通る文章になり、読むことができました。ありがとうございます。」

と返事が来て,よかったよかった,と思っていたのだが,提出されたレポートで引用されていたのが,

Ramón Y Cajal. Histología NERVIOS ÓPTICOS, KIASMA Y CINTAS ÓPTICAS *3

だった.

厚さ5cmのIndexMedicusのページを捲って,豆粒のように小さな文字で書かれた論文リストを追い,図書館にたのんで一週間かかってコピーを郵送してもらっていたころがあったなんて,日本昔話*4のようだ.そんな事は分かっていたはずではあるが,Cajal*5の原文を自由に手に入れることができて,その内容を容易に知る事ができるなんて,凄い.科学をめぐる現状を全て肯定する訳ではないが,確実に良くなった環境はある.そこでは障壁は外界にあるのではなく,自分の中にある.

「Cajalの原文にあたったことは素晴らしいです.安易な結論に結びつけなかったことも良かったと思います.」とフィードバックした.