「痛いの痛いの飛んでけー」の理論

脊髄の灰白質は10層の構造に分けられる(Rexedの分類).

 温痛覚を伝える細い線維(Aδ線維とC線維)は後角の浅層(II〜III層)に終始し,第二の神経細胞シナプスを作り情報を伝達する(脊髄視床路).微細な触圧覚を伝える太い線維(Aα線維とAβ線維)は後根から脊髄に侵入した後,後索に入るが(後索路),側枝を出してIII〜VI層にある介在性神経細胞を活性化する.この介在性神経細胞は温痛覚の情報を伝える軸索(Aδ線維とC線維)の終末をシナプス前抑制して,温痛覚の情報伝達を抑制する.

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  タンスの角に足の小指をぶつけたとき,「ぶつけた部分をさすったこと」があるヒトは多い.その時,「さする」触圧覚刺激が後角の抑制性神経細胞を介して,痛覚の神経伝達を抑制している*1

 侵害情報の中枢神経系の伝達が制御される機構をGate control theory *2と言う.

*1:痛いの痛いの飛んでけー

*2:Melzack, R. & Wall, P. D. Pain mechanisms: a new theory. Science 150, 971–979 (1965)